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【ダイハツ ロッキー 改良新型】なぜTHSではなくシリーズハイブリッドを採用したのか
1日、ダイハツが発表した改良新型『ロッキー』には、新開発の1.2Lエンジンが搭載されたシリーズハイブリッドとガソリン車2種が用意される。トヨタグループであるダイハツは、普通登録車ならTHS IIを利用したストロングハイブリッドもあり得たはずだが、あえてシリーズハイブリッドを選んだ。
ロッキーの開発の狙いや商品概要をプレゼンした仲保俊弘氏(商品企画部エクゼクティブチーフエンジニア)は、「ダイハツの電動化戦略は、まずはCO2排出の絶対量の多い車両から減らしていくことを優先させる。」と説明する。さらなる成長が見込めるコンパクトSUV市場を牽引するロッキーを電動化することで、電動化市場と同技術のあしがかりにしようというものだ。
新型ロッキーのボディサイズは全長3990mm、全幅1695mm、全高1620mmと、THS IIを搭載したヤリス(同前:3940mm、1695mm、1500mm)より若干ながら大きい。またトヨタとの協業部分として、発電機と駆動モーター部、バッテリー、パワーコントロールユニットなどを挙げた。
バッテリー容量は4.3Ahとトヨタ『ヤリス・ハイブリッド』と同じ数値のものがリアシート下に設置される(出力容量は0.73kW)。全長はヤリスより120mmほど長いので、SUVとしての荷室確保にも影響はない。THS II搭載は不可能ではないはずだが、日産やホンダが採用するシリーズハイブリッド方式(エンジンは発電のみに利用し動力源として使わない)にした理由はどこにあるのだろうか。
発表では、軽自動車の電動化もすみやかに進める(仲保氏)としながらも、今回ロッキーに採用されたシリーズハイブリッドの軽への展開は明言を避けた。もし、このシリーズハイブリッドを軽自動車にも転用するなら、独自技術で開発する意味はある。というのは、THS IIは完成度は非常に高いものの、軽自動車サイズへの展開ができるかというと微妙だ。
そもそも軽自動車に、マイルドハイブリッド以外のハイブリッドを搭載することにも無理がある。物理的なサイズ制限があるところにエンジンとモーター、バッテリー、さらにインバーターやPCUなどを搭載して、十分な居室または荷室を確保できるかという問題だ。環境規制から軽も電動化が避けられないなら、シンプルにBEV(バッテリーEV、フルEV)を採用するのがエンジニアリング的な正解となる。
現在、軽自動車のBEVを市販実用化しているのは三菱自動車と日産だけだ。商用車分野ながら、トヨタとともに軽自動車電動化のコンソーシアム(CJP)に参加するダイハツ、スズキともに、軽自動車のBEVは当然視野に入れているはずだ。このとき、一気に軽自動車のBEVに行かず、小型車のシリーズハイブリッドの開発を手掛けることは、技術と知見を自社に蓄積できるよいスキームといえる。コンソーシアムで標準化・協調領域でイニシアティブをとる意味でも電動化ノウハウを自社開発に投資することも意味がある。
軽自動車に流用できないパラレルハイブリッドではなく、シリーズハイブリッドを採用するのは必然ともいえる。THS IIはプリウス20年の歴史とノウハウの塊だが、見方によればシステムとしては複雑すぎる。そのまま利用するならともかく、後発がハイブリッドを目指すならシリーズ系ハイブリッドが合理的だ。シンプルで開発コストも抑えられ、BEV転用もしやすいメリットもある。