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謎の次世代ミニバン、メルセデスベンツ『Tクラス』とは一体何なのか

  • 《photo by Mercedes-Benz》
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『Tクラス』というメルセデスベンツのモデルを知っている人はそう多くないだろう。なぜなら、まだ発売されていないからだ。

メルセデスベンツのアナウンスによると、発売は2022年前半。「ターゲットをファミリー層とし、アクティブなレジャーにも対応するコンパクトMPV」という。

このクルマには特徴がふたつある。ひとつは背の高いパッケージングでスライドドアを組みわせていることだ。かつて、2003年から2005年にかけて『Aクラス』のプラットフォームを活用したMPVの『バネオ』というコンパクトワゴンが存在したが、その現代版と言っていいだろう。

もうひとつは、ルノー日産三菱アライアンスとの共同開発だということ。ストレートにいえば、ボディも含めてルノー『カングー』の構造を活用したモデルである。

8月25日、メルセデスベンツは欧州で『シタン』というスライドドア付のMPVを発表したが、これは新型カングーの「ベンツ版」となるビジネス需要中心の商用モデルだ。

Tクラスは、それをより上級に仕立てた乗用モデルという位置づけで、商用ではなく一般向けとなる。「アクティブなユーザーがはじめてメルセデスベンツの世界に足を踏み入れるモデルを目指す」のだそうだ。

注目すべきポイントは、スライドドア付のモデルを乗用車として一般ユーザーに向けて売っていこうというメルセデスの新しい戦略。たしかにミニバンの『Vクラス』やかつてのバネオのように、スライドドア付のクルマが同ブランドになかったわけではない。しかしそれらのターゲットは商用ニーズが中心で、欧州においては個人所有が広がらなかった。

しかし、バネオの終了から15年が経ち、欧州においても少しずつ個人所有のクルマに対するニーズが変化。背の低いスポーツモデルを好む人は減り、実用性を重視する人が増えてきた。メルセデス・ベンツも背の高いスライドドア付のモデルの需要が増えていると睨んで、満を持してのスライドドア付トールワゴン復活なのだ。

SUVブームの陰で気付かれにくいが、日本ではいまスライドドアを備えた背の高いモデルが大人気である。軽自動車は、ホンダ『N-BOX』、スズキ『スペーシア』、そしてダイハツ『タント』と販売上位3台をスライドドア付の背の高いワゴンが固めている。

登録車ではトヨタ『アルファード』などのミニバンが売れまくっているほか、気が付けばハイトワゴンのトヨタ『トール』が販売上位の常連となっている状況。その背景にあるのは、多くの人が実用性を重視したクルマ選びをしているからだろう。

ある意味、そのトレンドがちょっと遅れて欧州にも起ころうとしているのかもしれない。