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【VW ゴルフ 新型】電動、デジタル化を推進した8代目…価格は291万6000円から
フォルクスワーゲングループジャパン(以下VGJ)は6月15日、8代目となる『ゴルフ』を発表、同日より販売を開始した。ドイツでのデリバリーが開始されたのが2019年末なので、約1年半後に導入が始まったことになる。価格は291万6000円から。
◆ルーツはビートル
フォルクスワーゲン(以下VW)のルーツは『タイプ1』、いわゆるビートルから始まる。このビートルは、「ドイツの国民車として標準的な一家に対し、安全・快適に移動出来る実用車を多くの人々の手の届くものにするという使命を帯びて開発され、世界中で多くの人々に愛用された歴史的なクルマだ」と紹介するのはVGJ広報・マーケティング本部広報課の山崎信雄さんだ。そのビートルの実質的な後継者として1974年に登場したゴルフは、「実用的で高性能かつ安全なクルマとして、ビートルのDNAを受け継いだ紛れもないフォルクスワーゲン、“ピープルズカー”として誕生した」と述べる。
その後時代とともに、自動車を取り巻く環境も変わるに合わせ、ゴルフはモデルチェンジを重ね進化を続けてきた。「振り返ると必ずしも全てが世界初や新規性のあるモデルばかりではなかったが、一方で後々一般的になった様々な機能や装備をいち早く量販モデルに採用しても来ている」とし、「歴代のゴルフはまさにそれぞれの時代の自動車業界のトレンドを映し出す鏡のような存在だった」とコメント。
そして、そのゴルフが8世代目になった。「これまでのゴルフがそうであった通り、新型ゴルフもまた来るべき時代を先取りするクルマと位置づけている」とした。
◆太いCピラーは踏襲
新型ゴルフの特徴はいくつもあるが、最初に挙げられたのは、「ダイナミックなエクステリア」だ。「初代ゴルフの外観上の特徴は、極めてシンプルな面で構成された機能美を突き詰めたデザインだ」と山崎さん。歴代のゴルフは、「そのDNAを引き継ぎ、デイリーユースにおける高い実用性とクリーンで精度の高いデザインを融合させてきており、その特徴は新型ゴルフにも受け継がれている」という。
また歴代のゴルフのデザインの特徴として、「太くて力強いCピラーを思い出す人も多いだろう。今回のゴルフも踏襲しており、くの字型にリアフェンダーまで続くラインが弓を引き絞った時の弦のような、これから前に向かって解き放つエネルギーを象徴している」という。
また、空力特性を考慮し、「フラットなフロントデザインだけでなく、ボディ全体で改善し、Cd値は前のモデルの0.30から0.27へ大幅に改善。燃費への影響はもちろん、高速走行時の風切音など具体的に体感出来るレベルになっている」とのこと。
細部では、フロントとリアのフォルクスワーゲンエンブレムは新しいCIに基づいたデザインに変更。リアのエンブレムはテールゲートオープナーとリアビューカメラのハウジングの機能も兼ね備えている。また、新たにゴルフのモデル名をテールゲートの中央に配置し、「新世代のフォルクスワーゲンデザインを踏襲している」と話す。
◆クロームはLEDになる?
新型ゴルフ全グレードでLEDヘッドライトとLEDテールライトを標準装備。オプションで配光可変型の、いわゆるマトリクスヘッドライト、“IQライト”が装着可能だ。これは片側に22個ずつのLEDライトモジュールを搭載し、「対抗車、あるいは前方の状況、自分のクルマのスピードレンジなどを判断し自動で配光を可変させるダイナミックライトアシスト機能を有している。この他、ウインカーを点灯させるとIQライトはアニメーション表示が可能になり、周りからの被視認性効果も高めている」と山崎さん。
LEDテクノロジーはヘッドライトとテールライトだけでなく、インテリアやエクステリアのアンビエントライトのイルミネーションでも使われている。グレードによって全10色から全30色まで調光出来「上半分は青、下半分はオレンジのようにエリアによってカラーを変えられるとともに、5種類のプリセットでムードに合わせたライティングも可能だ」。
ドライブモードが付いているグレードでは、スポーツモードにするとメーター内からアンビエントライトまでイルミネーションが赤、エコモードにするとグリーンとドライブモードに合わせたライティングも可能になる。
1.5リットルエンジン搭載車にはフロントグリルにLEDライトストリップが装着。スモールもしくはフロントライト点灯時に光り、「VWのデザインチームの考え方として、これまではフロントグリルにクローム加飾が入っていたが、今後はLEDがクロームにとって変わると考え、このゴルフが他のVW車に先駆けてこのコンセプトを採用した」と語る。
◆タッチセンサーを多用
インテリア及びコクピット周りでは、「新型ゴルフは全モデルに共通し、10.25インチのデジタルメータークラスター、デジタルコックピットプロ、10インチのタッチパネルを含むインフォテインメントシステムにより、左右に繋がった一体感のあるデジタルアーキテクチャーを採用。“イノビジョンコックピット”と新たに命名された」と山崎さん。
今回各種の設定に関しての多くをタッチパネルで操作するようになっており、センターコンソールのインフォテインメント画面の下には、 “タッチスライダー”が配された。これはオーディオや空調設定のためのタッチセンサーで、溝が三分割されており、中央部分はオーディオとインフォテインメント用の操作スライダーで、その左右が空調の操作エリアだ。センター部分は一本指でスライドするとオーディオのボリュームのアップダウン。二本指でスライドするとナビ画面の地図のズームインズームアウトだ。
空調部分は、普通のタッチパネルと同じく一本指でタッチするとそのタッチごとに0.5度刻みで温度設定を変更可能で、指をスライドさせると20°から23°、あるいは20°から18°と一気に温度設定の変更が可能だ。シートヒーターを装着したクルマの場合には、2本指でポンとタップするとシートヒーターを1段階ずつ設定変更出来る。
ルームランプのスイッチもタッチセンサーで、1回タッチするとランプがオン。長押しをすると照度が暗くなり、好きなところで指を放すことで、明るさを調整する仕組みだ。オプションのパノラマスライディングルーフのコントローラーも、同じように後ろに指をスライドするとルーフが開き、前にスライドするとルーフが閉る。山崎さんはこれらについて、「スマートフォンなどのタブレット感覚での操作を実現している」と述べた。
もうひとつ、特徴的なこととして安全運転支援システムもグラフィカルな表現に変わったことが挙げられる。これまでは、文字表示で、例えばレーンアシストを選択すると、そのオンオフ切り替えのメニューがツリー状で表示されていた。しかし、新型ゴルフでは、運転支援システムの画面を呼び出した後、車線の部分をタッチすると、レーンアシストの設定メニューが表示される。つまり、「直感的に何を操作したいかで選んでもらえるようになった」と山崎さん。
こうした設定メニューのショートカットキーがセンターコンソール中央のタッチパネル下に集約され、ハザードランプの上に、エアコンと運転支援システム、下側は(グレードやオプションによって違いがある)ドライブモードの切り替えスイッチと、駐車支援システムの呼び出しスイッチになっている。
◆電動化技術を搭載したTSIエンジン
パワートレインは電動化されたe-TSIエンジンを搭載。このルーツは、2007年に5代目「ゴルフGT TSI」グレードで搭載されたTSIエンジンにまでさかのぼる。その後、2013年に7世代目ゴルフ導入時に、MQBと合わせ、これまでのレイアウトと前後逆にした前方吸気後方排気にレイアウトを改め刷新したのがEA211型で、これまでよりも小型軽量化されたTSIエンジンだった。そして、EA211型の改良型としてEA211 EVO型が導入され、これが最新世代だ。1リットル3気筒と、1.5リットル4気筒の2種類の排気量に集約。これをベースに新型ゴルフはEA211 EVO型のマイルドハイブリッドバージョンを搭載したのである。
このマイルドハイブリッドシステムは48Vで、エンジン始動、エネルギー回生、エンジン出力のアシストモーターの役割の3つを兼ね備えたベルトスタータージェネレーターというユニットと、リチウムイオンバッテリーをシート下に配置。大きくはこの2つで構成。
その働きについて山崎さんは、「ベルトスタータージェネレーターは、発進時はスターターとしてエンジンを始動させると同時に、このタイミングでモーターとしてエンジンのブーストを行う。つまりエンジンの走り出しのタイミングから早くトルクが立ち上がるモーターが発進をサポートし、いままでよりも滑らかな発進加速が可能だ」と話す。
コースティングモードについては、「これまでのTSIエンジンはある程度の速度での巡航時に、アクセルをオフにするとクラッチを切り離す形でコースティングする慣性モードがあったが、今回のe-TSIエンジンでは、その際にエンジンを完全に停止させ、より燃料消費を削減するエココースティングというモードを有している」という。そして、「ドライバーがアクセルペダルを踏み込むとベルトスタータージェネレーターが瞬時に極めて滑らかにエンジンを再始動させる。これによって素早く自然な再加速に移行する」とのこと。さらにエンジンオイルが40°以下の場合には、「ベルトスタータージェネレーターではなく、いままで通り12Vにつながっているセルモーターでエンジンを始動。つまりスターターが2つある」と述べた。
◆トラベルアシストは全車標準
新型ゴルフに先立ち導入された『パサート』及び『ティグアン』に採用された同一車線内の運転支援システム、“トラベルアシスト”を新型ゴルフでは全車標準装備。以前のモデルでは「60km/hまで主に渋滞時のサポートで似たような機能があったが、トラベルアシストは210km/hまで有効。主に車線中央維持をサポートするとともに、車間距離も維持するので、長距離ドライブの際の疲労を軽減」。また、これまでVWのレーンアシスト機能は、ステアリングホイールにドライバーが操舵を伝えることでハンドルを握っていることを検知していたが、今回からはステアリングホイールにタッチセンサーが内蔵され、ドライバーがステアリングを動かさなくても握っていることをクルマの方が判断することが可能になった。
また新型ゴルフでは新しい特徴として、デジタルコクピットのモードにトラベルアシストに特化した表示が出来る。VIEWボタンを切り替えることで表示可能だ。「いままでのデジタルコックピットでは一車線分の表示で、車線を認識していることと、前のクルマとの距離を表示していた。今回は新たに両サイドの車線を含めた3車線の周囲の状況を同時に表示することが出来るようになった」。また、周辺車が貨物車、乗用車、オートバイかも表示。これは、「システムが車両の周囲の状況を正確に認識しているということをドライバーが視覚的に確認出来るので、このシステムが安心だということを認識し、リラックスしてもらえる効果がある」とのことだった。
◆4グレードを展開
新型ゴルフはグレード体系を一新。4グレードを展開する。価格は1.0 eTSIの「eTSI Active Basic」が291万6000円から、「eTSI Active」が312万5000円から。1.5 eTSIの「eTSI Style」が370万5000円から、「eTSI R-Line」が375万5000円から。