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【日産 ノートオーテック】微妙な色合いを追求したブルー…インテリアCMFデザイナー[インタビュー]
日産『ノートe-POWER』にオーテックが追加された。そのデザインはプレミアムスポーティというコンセプトのもと、湘南の海の青さなどからインスパイアされたというので、今回は特にインテリアやCMFに特化してデザイナーに話を聞いた。
◆爽快なロングツーリングへの期待を誘う
「漣(さざなみ)を意識しつつ、湘南の美しさを上質な素材や匠の技で仕立てたインテリアになっている」と説明するのはオーテックジャパンデザイン部の青山雄未さんだ。これは現在のオーテック各車共通の特徴でもある。では、ノートオーテックのインテリアでドライバーに何を伝えたいのか。それは、「爽快なロングツーリングへの期待を誘うような空間にしたい」とのことだ。
オーテックは様々な特殊車両の製造なども行うため、匠の技を昔から培ってきたことから「職人は多くいる」という。「この職人達と“湘南”を話し合うことで、湘南の景観の美しい躍動感からインスパイアされたような匠の仕立てをしている」とインテリアの概要を説明。
その特徴は大きく3つあり、ひとつめは「海と空の仕立て」だ。「深みのある美しい青が湘南の地域にはたくさんあり、それをそれぞれの専用を素材ごとにこだわって、チューニングしている」と青山さん。
なぜそれぞれチューニングするのか。それは、「全部同じにしてしまうと、インテリアでコーディネートした時に、使っている位置や素材が違うため、違う青に見えてしまう」のだという。そこで、「それらをコーディネートした時に一番美しく見えるように、例えばステアリングの青は日が当たる場所、シートで使っている青は影が落ちるところなど、それぞれの使っている場所、使っている素材に分けて青をチューニングして作っている」と青山さん。「本革であれば、青が表面に均一に見えるように、木目では全面ではなく光ったところだけ青が出るようにしている」という。
次に、「海の仕立て」だ。その代表例としてキルティング部分やメイン材のエンボス部分で表現され、「ウェーブエンボシングと呼んでいる。広がる波のようなダイナミックなリズムを表現したいと思い、リズミカルな波のパターンを入れて、それが出るように凹凸や、影を調整して作っている」と青山さん。「そこからリズム感が生まれることで、そこから広がっていくような躍動感を表現している」と説明。
最後は、「空の仕立て」だ。「湘南は海の青だけでなく、青空と雲のレイヤー感が非常に美しい。そこに落ちる、雲と青空の影や、雲に映り込む海の青などからレイヤー感がインスパイアされている」と述べる。これらは、「オーテックの証として装着している、オーテックの刺繍や、ステッチなどオーテック専用にチューニングした影の落とし方などが綺麗に出るようにデザインしている」と説明し、「こういった“仕立て”は、匠がいるからこそ出来ている」と語る。
◆湘南ブルーとオーテックブルー
オーテックブルーとはよく聞くワードだ。もうひとつ、湘南ブルーというワードもある。この使い分けについて青山さんは食材に例えて説明する。「まず湘南ブルーは“生”の状態、それぞれの違った青を湘南ブルーと呼んでいる。そこから“調理”、我々では匠が仕立て、コーディネーションすることで湘南ブルーから、会社を代表するオーテックブルーになる」という。インテリアにおいても、「ステッチの青やシートの青などが生の状態、つまり湘南ブルーで、そこからコーディネーションし、漣をモチーフに取り入れ調理することでオーテックブルーに昇華する」とのことだった。
このオーテックブルーは非常に好評で、オーテックのどの車種でも、「50%から70%近くまで占め、ミニバンでも同様だ。ミニバンで青が半分以上を占めている車種は多分地球上で存在せずオーテックだけだ」と好評であることを明かす。
また、オーテックブルーは、「オーテック創業時のエンブレムが海や空の青をモチーフにしており、そこに創業の地である湘南をインスパイアした伝統の意味を込めること、そしてe-POWERをはじめとする電気自動車の革新の意味を込めてオーテックブルーをブランドのカラーにしている」とコメントした。
◆12のシーンで検証
オーテックのブルーへのこだわりは、これだけに収まらない。「エクステリア、インテリアともに全て湘南をインスパイアし、湘南の美しい四季折々や、様々な天候、時間帯を何とかしてクルマに落とし込めないか」と追求。
エクステリアカラーでは、「湘南エリアの天気(晴・曇・雨・雨上がり)×時間(朝・夕・夜)の12のシーンでオーテックブルーを検証している」と青山さん。「晴と雨だけ見ておけばという話もあるが、我々は湘南に特化しているので、晴、曇、雨、雨上がりの時に、実際の場所にいろいろな塗装板を持ち込み、雨の雫が映ったところなども含めて検証。夜のシーンも街灯の光が入るとどういう青の見え方をするかなど、湘南の全ての天候、全ての時間において美しく見える青はどういうものかを検討開発している」と青山さん。その結果として、「どんなところで写真を撮ってもカタログっぽい写真になるような、そういう青を目指して作っている」と話す。
◆ブルーをどう使うか
ここからは、細かいこだわりについて伺ってみたい。
—-:早速ですが、オーテックのクルマ達は、そのクルマによって違うブルーを採用しています。それは、クルマのコンセプトやサイズによってどの青にするかを決めているのですか。
青山:そうです。サイズとコンセプトによります。例えば大きい面積とメリハリのある面にあまりにも明るい色を塗ると激しい青に見えてしまいますので、ほかのオーテック車の横に並べた時に、同じような雰囲気の青に見えるようにしています。
—-:今回のノートオーテックのインテリアでのこだわりはどのようなところでしょう。
青山:細部にもこだわりましたが、まずは全体の印象です。特にシートは、基準車が持っていない張り分けになっています。色の入る場所も、単純にベース車両の色変えになってはいませんので、型紙も新たに起こし直しています。つまり同じように見えるのですが、ステッチの通し方や精度、色も全部違います。まさにゼロ開発に近いといってもいいでしょう。プレミアムに見せるための作り込みとして、ただの色変えでいいのかと考え、そこで、ゼロからやり直すことを職人の力を借りて行いました。
またノートが持っている少しポップなキャラクター性を、プレミアムスポーティにする時にどう表現するかを踏まえ、青の面積の使い方がノート特有になっています。
—-:エクステリアと違ってインテリアは全部ブルーにすることは出来ませんから、かなり難しいコーディネートになると思いますが。
青山:例えば『エルグランドオーテック』はステッチなどのアクセントだけ青にして、それ以外は全部黒ですし、一方、ノートオーテックは青の面積が多く、『セレナオーテック』のマイナーチェンジのものは『キックスオーテック』よりも青の面積は少し少ない。このように青の入る位置と面積が全然違うのです。
—-:しかも先ほどのお話のように素材によって色味が微妙に変わっていくのですね。
青山:私たちは同じ青の革であっても何種類か持っていますし、新たに開発することもあります。加飾や手に触れる部分、また先進デバイスが新しく入っても来ますので、そういったものの近く、あるいはキャラクターがより生きるだろうというところはこの青を採用しています。特にノートオーテックやキックスオーテックは新世代ですから、先進デバイス関係、先進装備が変わっていますので、そこの近くの青やコーディネーションはすごく気を使って採用するようにしています。