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パナソニック、背景が透ける透明有機ELディスプレイを商品化…自動運転バスの実証実験でも好評

  • 《写真提供 パナソニック》
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パナソニックは11月20日、次世代ディスプレイについてのオンライン説明会を開催し、透明有機ELディスプレイモジュールを商品化し、日本、アジア大洋州市場を皮切りに12月上旬から順次グローバルで販売を開始すると発表した。

説明にあたったパナソニック アプライアンス社スマートライフネットワーク事業部ビジュアル・サウンドBU商品企画部の村山靖部長によると、透明ディスプレイは、背景が透けて見えることで、空間を遮断せずに周囲の環境に溶け込み、実物を重ねて映像を表示するなど多様な表現が可能なため、空間価値を高める次世代の映像表示デバイスとして関心が高まっているという。

今回商品化した透明有機ELディスプレイモジュールは、透明有機ELパネルと電源ユニット、リモコンがセットになったもので、調光ユニットありの「TP-55ZT110」と調光ユニットなしの「TP-55ZT100」の2種類がある。価格はオープンで、「法人向けになるので、システムの違いなどによって価格は納入先ごとに変わってくる」と村山部長。

T100は背景を透過させながら明瞭な映像表現ができるタイプなのに対し、T110は光の透過率を電気的に制御する独自開発の調光ユニットをパネル背面に装着したことによって、スイッチ1つで透明モードと遮光モードの切り替えができるようになっている。特に遮光モードでは、パネル後方からの光透過を抑え、明るい環境下でも背景が見えない、黒の引き締まった高コントラストな映像を表示することができるそうだ。

なぜディスプレイが透明に見える化というと、「網戸と同様に、格子状に抜けた部分を通じて背景が見える仕組みで、RGBの色のついたセルと透明画素を交互に配置することで、オフ時には透明部分を通して背景が見える」(村山部長)とのことだ。

パナソニックでは2016年以降、IFA(ドイツ)、CES(米国)、ミラノサローネ(イタリア)、中国国際輸入博覧会、CEATEC(日本)などの展示会で透明ディスプライの試作品を展示し、市場性を模索しながら改良を重ねてきた。

直近では、万博記念公園で行われた次世代型モビリティサービスの実証実験(10月23日~11月16日)に参画。小型自動運転EVバスに透明ディスプレイを設置し、透過して見える風景とディスプレイに映し出されるアバターによるガイダンスの映像を重ねてみながら移動するという試みも行った。乗客の反響が大きく、好評だったそうだ。

また、次世代ディスプレイ開発の取り組みとして、表面素材の質感と表示の視認性を両立した「高性能ディスプレイモジュール」と、既存製品よりも映り込みのないクリアの映像を実現した「ミラーディスプレイ」も紹介した。特に高性能ディスプレイモジュールについては、期間限定でオープンした日産自動車の体験型エンタメ施設「ニッサン パビリオン」内のカフェで「インタラクティブテーブル」として採用された。

「ディスプレイそのものを表に出すのではなく、空間に溶け込ませる演出ができれば、心地よい空間を創出していける。今まで映像が映し出せなかった窓ガラスなどに映せることは大きな魅力であり、空間演出ができるディスプレイとして大きな期待をしている」と村山部長は話す。ここ数年低空飛行が続くパナソニックとしては、次世代ディスプレイを何としても大きなビジネスに育てたいところだろう。