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自動運転一人乗りロボ「ラクロ」に乗ってみた【岩貞るみこの人道車医】

  • 《写真撮影 岩貞るみこ》
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歩行が困難な人が使う車椅子は、腕の力で進むため、上り坂を進むのはかなり大変である。そうした場合、電動車椅子やシニアカーがあるのだが、実は結構、操作ミスによる事故が多い。

自動車は自動運転技術でハンドルやブレーキ操作をアシストして安全性が向上しているのに、電動車椅子系は完全にドライバーの運転技術にゆだねられているのが現状なのだ。

そんなことを思いつつ、2020年10月1日から東京中央区にある佃・月島エリアでシェアリングサービスを開始した、自動運転一人乗りロボ、ラクロ(RakuRo)に試乗してみた。

◆圧倒的に可愛くて乗り物として楽しそう

ラクロはZMPが開発した自動運転ロボである。無人宅配ロボ デリロ(DeliRo)、無人警備・消毒ロボ パトロ(PatoRo)の三兄弟のひとつで、3Dライダー、カメラによる周囲監視、レザーセンサーによる足元監視に加えてバンパーセンサーが搭載されている。

電動車椅子やシニアカーと同じカテゴリーに入るため基本的には歩行者になり、6km/hまでの速度で歩道の走行が可能。ただほかと大きく異なることは、圧倒的に可愛くて乗り物として楽しそうだということだ。

これ、すごく大事!

若い世代の車椅子ユーザーと話をしていると、デザインが病院臭くてかっこ悪いという声をよく聞く。「乗っていると、いかにも歩けません、という悲しさを感じる。まわりからもそんな視線で見られている気になる」と言う人も。

その点、ラクロはかわいい。なんたって目がついていて表情まで作れるのである。その理由は、ターゲットを歩行困難者に絞っていないことだ。ちょっと疲れたから乗る、ラクロの方が便利だから乗る。そんな軽い感覚での利用も見込んでいて、大型ショッピングセンター(結構、歩く。荷物が多いときに歩き回るのはすごく疲れる)や、観光地(2020年11月2日~23日(月・祝)で、姫路城から姫路駅まで観光ライドの実証実験中)、空港内など、だれでも“ちょっとした距離を楽に移動”するときに使ってもらうことが想定されているのである。

予約~乗り方は、いたって今どきで簡単。事前にスマホアプリで予約して行きたい場所を選択しておけば、当日、ラクロステーションで乗り始めるときに、座席前に設置された大きなカーナビ画面のようなタブレットに予約番号を入れるだけだ。行きたい場所までのルート設定も完了している。佃エリアの道路のいくつかはすでにデジタルマップが作成されていて、ラクロにインプット済みなのである。

◆人間以上に礼節をわきまえているラクロ

佃ステーションからの走り出しは、いきなり横断歩道を渡るという場面である。歩道は車道に向かって下り坂なのだが、目の前をびゅんびゅん行きかう車道に向かってラクロがするする進むため、かなりあせる。まだ、信頼関係が築けていないのだ。しかし、赤信号を認識すると、しっかりと止まる。

信号機のある交差点では、実は、青信号でも止まる。ラクロはゆっくり進むため青信号の途中で渡り始めると、渡り切れなくなる可能性があるからだ。なので、青信号の場合、次の青信号になるまで待つよう設定されている。

私が選んだルートは広い歩道を進んでいく快適な道。ただし、自転車の速度を抑えるために数本のラバーポールでシケインのような速度抑制デバイスが途中にいくつも設けられている。ラバーポールの間隔は、ラクロがすりぬけるのにギリギリの幅である。

どうする、ラクロ? するとラクロは少し手前からラバーポールを認識して、すり抜けられる角度を狙って進んでいく。直前に行くと、さらに安全にすり抜けるために、速度を落とし、たまに止まる。そのときに「右に曲がります」「左に曲がります」と、ラクロ自身がいま、なにをどう判断し、どう動こうとしているのかを「言葉で」伝えてくれるので、不安はない。

走行中のラクロは、目があって感情を示すほか、言葉を発することもできる。人がいると「こんにちは」と言い「ロボットが走行しています」と伝える。「道をおゆずりください」と呼びかけ、ゆずってくれたら「ありがとうございます」と御礼まで言う。挨拶をかわさなくなった現代において、人間以上に礼節をわきまえているのだ。

圧巻なのは、子どもたちに大人気だという点である。遊歩道を進んだとき、ちょうど保育園児のお散歩に出くわしたのだが、まあ、指さされるわ注目されるわ、「乗りたい」と大合唱が始まるわで、アイドル並みである。乗っている私自身、彼らの笑顔に囲まれてものすごくいいことをしている気分になってしまう。

◆自動運転で走らせて、安全なのか?

これは、試乗前に私が抱いていた疑念である。しかし、試乗後は、間違いなく安全だと感じる。道を間違えないし、道をはずさないし、障害物があれば止まって安全に回避する動きを模索する。ある意味、人が運転するより安全だと思う。ついでに、周囲の人たちの受け入れ感情も圧倒的に高く、邪魔もの扱いされないどころか、好意的に笑顔で接してくれるため、乗っていて孤独感を感じない点もすごくいい。

今後、ビジネスにしていくためには、利用者を増やす必要がある。佃エリアでは高層マンションで使われていない駐車場をラクロステーションとして活用たり、店舗などで止められるようにするほか、遠隔監視で自動回送できる方法を考えているという。

自動回送については、これから議論が必要な部分だが、人の操作よりも安全に走る点を考慮すれば、住民の理解を得つつ環境を整えられる可能性は高い。

私もクルマに乗れなくなったら佃に住もうかな。そう考えると、ラクロは、町の魅力度にも貢献してくれる可能性があるのである。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。