注目の自動車ニュース
【マツダ MX-30】2030年に向けた電動化ビジョンを証明するエース
1920年1月30日、今へとつながるマツダは誕生し、昭和の時代になると3輪トラック、4輪車の分野で日本を代表するメーカーにのし上がった。そして創立から100年の節目を迎える直前の2019年10月、マツダは東京モーターショーにバッテリーEV(電気自動車)の『MX-30』を参考出品している。衝撃をもって迎えられた東京モーターショーから1年、正式にマツダMX-30の市販モデルがベールを脱いだ。が、その第一弾として発表されたのは、ピュアEVではなくマツダ独自のマイルドハイブリッド仕様モデルだった。
マツダは2007年に「サステイナブル“Zoom-Zoom”(ズームズーム)宣言」を発表し、「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」を高次元で両立することを目標に、技術開発に取り組んでいる。それから10年後の2017年には「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言 2030」を公表した。これは2030年を見据えた技術開発の長期ビジョンだ。このビジョンの実現に向けて、次世代技術を積極的に採用することを明らかにした。マツダは2030年までに全ての車種に電動化技術を搭載するが、それを証明するエースとして送り出されたのがマルチソリューション戦略を採るクロスオーバーSUVのMX-30だ。
◆新しい感覚を生むインテリア空間
マツダMX-30は観音開きのフリースタイルドアを採用し、その魅力を活かして「開放感に包まれる」新しい感覚を生むインテリア空間を造り込んでいる。その特徴は、マツダならではの、人間中心の開発思想に基づいたドライビングポジションやヒューマン・マシン・インターフェイスだ。ドライバーの前に視認性に優れた7インチのTFT液晶タッチパネルディスプレイを置き、その左側に8.8インチの横長ディスプレイと必要な操作部を集約したフローティングコンソールを配置した。
シフターとコマンドコントロールは前方に配置し、自然な腕の角度で各デバイスを操作できる設計としている。そしてセンターアームレストにはスライド機構を採用し、その間にカップホルダーを配すなど、今までにない創造的に使える収納スペースを実現した。また、モダン表現としてカラーとマテリアルにもこだわっている。環境を意識した素材を積極的に採用し、コンソールトレイ部とドアグリップに採用したのは、天然由来の環境負荷の少ないコルクだ。ドアトリムのアッパー部の繊維素材にはリサイクル原料を採用した。インテリアもホワイト内装とブラウン内装、2つの個性あるこだわりのコーディネートを実現している。
ボディサイズは、『CX-30』に限りなく近い。4395mmの全長と1795mmの全幅、2655mmのホイールベースはまったく同じだ。が、全高は10mm高い1550mmとした。また、マツダのデザインテーマである魂動デザインも、次のステージを見据えた味わいとなっている。サイドビューもランプデザインも個性的だ。AピラーからDピラーのキャブサイドの一部とリアゲート部分をメタリックカラーにしてキャビンのスピード感と一体感あるリアエンドを強調したフレームドトップも特徴のひとつ。ボディカラーは、ルーフまで同色とした4色のほか、おしゃれな3トーンカラーを用意した。
◆Mハイブリッドバッテリーも従来より高性能化
気になるパワーユニットは、e-SKYACTIV Gと名付けられたマイルドハイブリッドである。直噴ガソリンエンジンのSKYACTIV-G 2.0をベースに、マイルドハイブリッドシステム「Mハイブリッド」を組み合わせた。1997ccの直列4気筒DOHCエンジンをモーターが燃費性能のさらなる向上をサポートする。最高出力は115kW(156ps)/6000rpm、最大トルクは199N・m(20.3kg-m)/4000rpmだ。
モーター出力は5.1kW(6.9ps)/1800rpm、最大トルクは49N・m(5.0kg-m)/100rpmで、24Vのリチウムイオン電池を9個、10Ah搭載する。トランスミッションはスカイアクティブドライブと呼ぶ電子制御6速MTだ。エンジン停止領域を拡大し、再始動時の静粛性も向上させた。Mハイブリッドバッテリーも従来のものより高性能化を図り、より多くの減速エネルギーを回生・蓄電することを可能にした。2WD(FF)モデルのWLTC燃費は15.6km/L、4WDモデルは15.1km/Lだ。
サスペンションは『マツダ3』やCX-30などと基本的な形式を同じにする。フロントはマクファーリンストラット、リアはトーションビームで、駆動方式は前輪駆動の2WDと4WDを設定した。最新の制御技術、「G-ベクタリング コントロール プラス」(「GVC Plus」)を搭載し、今までのGVCによるエンジン制御に、ブレーキによる車両姿勢安定化制御を加え、より高い操縦安定性を実現している。電子制御オンデマンド式の4WDシステムは、タイヤの動きやGセンサーなどの情報から、車両の走行状態をリアルタイムに検知し、路面状況やタイヤの荷重状態の変化を素早く予測。状況に応じて前輪と後輪へのトルク配分を最適化する先進の「i-ACTIV AWD」だ。
◆センターピラーレスでも高い衝突安全性能を実現
先進安全技術の「i-ACTIVSENSE」も最新のものへと進化させている。その筆頭が、被害軽減ブレーキを進化させ、スマートブレーキサポートに交差点での追突事故防止を図る「右直事故回避アシスト機能」を追加したことだ。また、白線が引かれていない道路での逸脱回避をアシストする「ロードキープアシスト機能」と車線変更時の衝突回避をサポートする「側方危険回避アシスト機能」を備えた「緊急時車線維持支援」も盛り込んでいる。パッシブセーフティではセンターピラーレスのフリースタイルドアを採用しながらも、高強度かつ効率的なエネルギー吸収構造などによって高い衝突安全性能を実現した。
最新の知見と最高の技術をもって送り出したマツダの意欲作がMX-30だ。運転する愉しさについては、試乗してチェックすることになるが、マイルドハイブリッドに加え、今年度中にバッテリーEVモデルがリース販売されると発表された。これからのバリエーション拡大と進化にも期待が膨らむ。