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【日産 ルークス 新型】ドヤ顔ではなく品と凛のあるクルマ…エクステリアデザイナー

  • 《撮影 滑川寛》
  • 《写真提供 日産自動車》
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日産から発売された軽スーパーハイトワゴンの『ルークス』。そのデザインは“品があり凛としたクルマ”を目指したという。

◆洗練され存在感のあるクルマ

そう口火を切るのは日産デザインマネージャー・エクステリア担当の渡邉和彦さん。現実化するにあたっては3つのデザインコンセプトキーワードが設定された。それは、“洗練された”、“存在感のある”、“直感的な”である。特にエクステリアにおいては、洗練と存在感に注力して進められた。

なぜそういったデザインを目指したのだろう。渡辺さんは、「スーパーハイトワゴンは軽自動車の中でのミニバンのような存在。その多くはカスタム系、いわゆるドヤ顔みたいなものだ。その一方でスッとした標準顔の方が好きという方もたくさんいる。ニーズや存在感はいわゆるドヤ顔の方が強いかもしれないが、典型的なそういった表現ではなく、もっと洗練さを与えたいと考えた」と話す。

その理由は、「このクルマをファーストカーとして使うお客様をはじめ、ダウンサイザーもいる。そういったお客様が経てきたクルマの歴史や持っている感覚を意識すると、“品と凛”といったよく考えられた表現や姿勢がデザインとしても大事だと思い取り組んだ」と述べる。

◆ホイールベース延長で室内を広く

パッケージではフロントホイールをより前に出すことでホイールベースを先代『デイズルークス』よりも63mm延長し、室内を大幅に広くした。「(フロントホイールが前に出たことで)前席をさらに前に出し、かつ少し立った姿勢で座らせることが可能になった。その結果、リアのニールームが大幅に増加。エルボールームも23mm程度広くなっている」と説明し、存在感をアピールする。

また使いやすさでは、スライドドアの開口幅を65mm拡大。「これは前席の乗車位置が前に移動するとともに、Bピラーが前に出たことで実現した」という。

もうひとつはドライバーから見た時の前方の視界だ。渡辺さんによると、「上下の視界の角度と左右方向の見開きもクラストップを実現。非常に高いアイポイントから見晴らしの良いクルマになっている。これらが使いやすい代表的な部分だ」と説明した。

◆キャビンは薄く長くルーミーな印象に

外観的にはどのような印象を狙ったのか。渡辺さんはいくつかの特徴を挙げる。「まずタイヤを四隅においてドシッとした安定感を作った。またキャビンと、ウエストから下のボディの比率を、人を少し高く座らせることができたことで、高いベルトラインを実現。そのおかげで下のボディのボリュームをしっかりと確保。フロントウィンドウからルーフに向かって流れるようなラインとともに、相対的にキャビンは少しスリークな印象を与えることで、四角いスーパーハイトワゴンであってもそのような形を作った。その結果、キャビン全体が薄く長いルーミーな印象にできている」と語る。同時に「フロント周りではランプ部分を幅目一杯使うことでワイド感を強調した」。

品と凛をキーワードに、洗練された存在感のあるデザインを纏ったルークス。「これはハイウェイスターに限ったことではなく、両方のグレードで表現している」と渡辺さん。

ボディ全体では「水平基調による落ち着きによって品の良さを表現」。具体的には、「サーフェイス、面の作りやボリュームの抑揚といったもので、ペラペラにならないようなしっかりとした塊感を持たせつつ、ラインが多く煩雑にならないよう、面の構成や使い方でクリーンな印象を与えた」と述べた。

◆こだわりのフロントフェイス

フロント周りでは、「厚みや、ボンネットから前全体のノーズ部分の厚みをしっかりと表現」。そのうえでハイウェイスターは、「強い存在感とともに、端正な印象を同時に持たせた。標準車は親しみが持てるハンサムな顔つき」。そうすることで、各々のキャラクターの違いを表しているのだ。

特にヘッドランプは注力した箇所だと渡辺さん。ハイウェイスターのプロパイロットエディションにはアダプティブLEDヘッドライトを採用。メインビームの見せ方は、「“アドバンス”とイメージが伝わるような緻密な細工をしている」と渡辺さん。具体的には上方についているメッキ部分は非点灯時ではクロームのような見え方だが、点灯時にはこれ自体が光るので、「驚きをもって見てもらえるデザインで、当初からこのようなものを作りたいという狙いを持って実現に取り組んだ。非常に良い形で完成させることができた」とその完成度に自信を見せる。

また、ハイウェイスターのLEDヘッドランプは、「顔をワイドに見せたいという思いをさらに強調しつつ、キラキラした高品質さやシャープな印象を加えて表現」。具体的には、ヘッドランプの真ん中を横に貫通するクロームのフィニッシャーによって全体のワイド感を表している。その上下にLEDのリフレクタータイプの部屋を整然と並べ、また断面ではヘッドランプが途中でくの字に折れているような形状を採用し、「先進的な印象を与えている」という。

標準車のハロゲンヘッドランプ仕様では、「中身の造形は非常に凝ったもの」と渡辺さん。黒艶のベースの中に印象的なクロームのモチーフを配置し、「引き締まった表情と、少し柔和、親しみやすい目つきを表現している」と説明。

そのヘッドランプとボンネットフードの合わせ方にもこだわりがある。人がクルマの周りに立って見下ろす場面で、「ヘッドランプとボンネットフードの隙間をほとんど感じさせないような合わせ方にした」。これは、ヘッドランプレンズの上側に一部ボンネットが覆い被さるような形にしているためだ。この結果、「つるっとつながって感じさせることができた」とのことだった。

そのほかにも作り込みへのこだわりもかなり強く、フロントグリルは、冷却開口として、「実際に穴の開いた形から上にいくに従ってランプと関連付いた黒艶の立体の形になり、そこへ向かってグラデーションで変化していく凝った造形だ」と渡辺さん。

もう少し細かく説明すると、グリルには六角形のパターンが使われているのだが、下の方は実際に穴が開いている。そこから上にいくに従って六角形の穴が小さくなりながら浅くなり、最終的にはほぼ平滑面になる。そうすることで見る角度や光の当たる方向によって見え方が変わり、様々な表情が楽しめるのだ。また実際の穴も、ここまでは開いていて、ここから先は穴はないという、「少しぶっきらぼうな表現を避けることで洗練さを表している」と話す。

◆Vモーションが日産の証

ここで気になるのは三菱『eKスペース』との関係性だ。特にeKスペースとルークスの標準車はかなり近いイメージに捉えられがちだ。その点について渡辺さんは、「日産は顔周りについて統一したテーマ性を車種をまたいで持たせている。今回のルークスでは顔周りで使うVモーションという象徴的な形を、ハイウェイスターと標準車、それぞれに違った形で取り入れた。特に標準車ではそのVモーションを、親しみがありながら、スッとした、すましたような印象のハンサムフェイスに採用。顔の上の方はグリルとランプがワイド方向にすっきりとつながっている中に、自然にVモーションが入ることを意識した」とコメント。

そして、「すっきりした印象はekスペースも共通ではないかと思っている。その中で各々の会社の特徴を主にグリルエリアで差別化しようと話し合った結果だ」と述べた。

◆リアコンビランプで大きく印象を変える

リア周りは、「外から見ても中が広いと思ってもらえるような形やフォルムを作ったが、ただの箱であったり、不安定に見えて欲しくないので、しっかりと安定したスタンスを持つ張り出した四輪に、ボディがどっしりと乗っているような全体のボリュームを作り、表現した」という。

そのうえで標準車は「非常にクリーンな印象を強調するため」に、リアガラスと一体になったようなバックドアの黒いフィニッシャーや、リアコンビもそこにつなげることで、「グラッシーでルーミーな印象を訴求」。ハイウェイスターは、「存在感を強めたい」と、横方向にワイド感を強調したクロームのフィニッシャーをバックドアからランプに向かってつなげられ、「ワイド感、立派な印象が表現できた」と渡辺さん。

縦長のリアコンビランプは、テールランプが点灯した時には非常に細い2本の赤いチューブが印象的なモチーフとして光る形状を持たせた。そしてハイウェイスターはクロームのフィニッシャーが入り、アウターレンズはクリアーを採用。標準車はアウターレンズに少し赤みのかかったレンズを使用し、ハイウェイスターとは印象の違うデザインが用いられている。